Study abroad record 留学の記録
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大江 美佐里
2009年の9月から2011年の12月まで、スイスのチューリヒ大学病院に留学していました。スイスはハイジ・チーズ・チョコレート・マッターホルンが有名ですが、そのイメージ通りの「山小屋・草原・牛」がみられ、大変自然豊かな環境で研究活動に励むことができました。私は趣味でホルンを吹きますので、スイスで普通のホルンだけではなくアルプホルンも習い、休日には教会でのミサや地域での演奏会に出演して演奏していました。アルプホルンは3メートル弱にもなる、とても長い楽器なので持ち運びが大変です。しかし、現代科学の粋を集めて開発されたカーボンファイバー製のアルプホルンがあり、たったの1kgで伸縮自在ですので、それを購入して日本にも持って帰りました。本業の研究の方も帰国までに雑誌に1つ論文を載せることができ、非常に大きな成果を得ることができました。まさに公私共に充実した日々を過ごした留学でした。
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佐藤 守
私は2015年11月から2年間、ドイツのTübingen(テュービンゲン)大学病院精神科ニューロイメージング部に研究留学していました。留学前より久留米大学高次脳疾患研究所という、主に脳生理学を研究分野とした研究室に所属しており、そこで脳生理学の基礎を学び渡独しました。テュービンゲン大学はfMRI、fNIRS、EEGなどの研究で世界的に影響の大きな論文を数多く出しており、そのような先進的な研究室で学ぶことができたことは貴重な経験となりました。
私はそこでfNIRSを用いて認知課題を施行した際の脳機能を、日本人とドイツ人で相違があるかを検討していました。精神科領域のみならず、神経認知の評価を必要とする現場では、様々な神経心理学的検査や認知課題が用いられていますが、その指標を「人種差なく用いることができるのか」という点も、検査の標準化のためには非常に重要なことなのです。
研究所では各グループが週に2度集まり研究の進捗状況やプレゼンテーションを行い、お互いの研究内容を検討し合うという時間がありました。そこで研究の課題が見えたり、次に繋がるアイディアが生まれていきます。私の専門は統合失調症ですが、ADHD児を対象としたNeurofeedback研究などは非常に興味深い内容でした。カンファレンスはドイツ語で行われるため当初は全く内容が理解できなかったのですが、毎回同僚がその内容を英語に翻訳してくれたりし、優しく接してくれました。おかげで最終的には完全ではないものの、ある程度カンファレンスの内容を理解できるようになりました。留学先のテュービンゲンおよび大学についても簡単に紹介したいと思います。テュービンゲンはドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルク州(州都はシュトゥットガルト)に属する人口8万人超の小さな町です。その人口の3割が学生をはじめ教職員など学校関係者で成るため、通称「大学町」と呼ばれています。町の中心には南ドイツを横断するネッカー川が走っており、煉瓦色の屋根にパステルカラーの家々が並び、1511年製の天文時計が象徴的です。もちろん古きドイツのイメージを裏切らず、教会や城(一部は校舎として使用されている)も存在し、釣鐘が日に数度時間を知らせてくれます。また、高名な作家として知られるヘルマン・ヘッセもこの地に住み、彼が働いていた本屋はヘッセ記念館として形を変え、今なお多くの観光客で賑わっています。テュービンゲン大学は1477年に神学校として設立され、もともとの造形を残しつつ部分的に改築しながら総合大学(神学、法学、医学、経済、哲学など)として現在の形に至っています。そして、この歴史ある大学は多くの著名人とも縁があります。先述したヘッセに加え、「ケプラーの法則」で知られる天文学者ヨハネス・ケプラー、詩人ヘルダーリンなどがその代表格です。また、「身体原因論」や「単一精神病論」などを提唱したウィルヘルム・グリージンガーや「アルツハイマー病」で知られるアロイス・アルツハイマーもここで学び、その後世界で名を知られることとなりました。このような町で生活できることは、それだけで私をうっとりとする恍惚の境地に浸らせるには十分なものでした。 今回、直接テュービンゲン大学のFallgatter(ファルガッター)教授にお願いして留学させていただくこととなりましたが、それを実現できたのは医局の協力と柔軟な対応があってのものだと感じ、大変感謝しています。
「自分の可能性を広げること」
留学に行ってから物事の考え方も変わり、一回り大きく成長したように思えます。これからの自分の人生が楽しみです。最後になりますが、この留学記をご覧になってくれた皆さま、久留米大学精神科で一緒に働きませんか?そして、「自分の可能性」を信じて世界に飛び立ちましょう。